[鳴戸(有吉派)]・[読書紹介]上野千鶴子・中西正司『当事者主権』、岩波新書(2003)

 有吉派に所属する鳴戸と申します。いずれ他の構成員も投稿してくるかと思うが宜しく。
 本書は、障がい者として「依存」する立場から、当事者として、介助内容を自ら決め、行政が機能しないばあいは、要求を行なうというパラダイム転換を行なった歴史とその意義を考察したものである。(「介護」と「介助」の違いについては紹介の本を参照)

 この要求を行なうにあたって当事者自身が団結して従来の形ではない組織を作り、その組織自身で行政に出来ないサービスを実行したデータをもとに行政側と交渉して改善させた。この一連の活動はまさに圧巻。当事者の強みをたくみに生かした戦術を現実化した運動があったことをしって衝撃を受けた。

 この本は、障がいの問題だけでなく介護保険の問題にも言及しているため、いい勉強になる。

 しかしなんといっても「当事者主権」の大切さを痛感できる。当事者だからこそわかること、他人にはわからないことだからこそ主張することが、何かを変える原動力になるということをここまで鮮やかに示している本はあまりない。教育に関わる人は、「不登校学のススメ」の項目は是非読んでもらいたい。

 「他人と違っていいし、それで不利益を蒙る目にあいそうなら主張するのは当然だ。」という主権者意識をもたせることは、果たして現在の学校制度では可能なのかを考え、今後に生かして欲しい。「生徒」という当事者主権に教師は何が出来るのか?
 生徒がコトバや行動などで表現しても聞き入れない教育システムが「当事者主権」や「主権者教育」をになっていけるのか?
 この本を読んで考えるきっかけになればと思う。
 以上。